O-157は清潔な場所でしか生きられない
みなさんが殺菌・抗菌に走る最大の理由は、近年、恐ろしい食中毒菌が増えているからでしょう。毎年、食中毒により多くの命が奪われています。
みなさんもよく知っているO-157は、大腸菌の変種です。大腸菌は悪玉菌と呼ばれ、悪者扱いされがちです。しかし、大腸菌は、O-157などの病原菌が腸に入ってくると、いち早くそれを察知し退治するという、腸内の番兵のような役割を担っています。
ところが日本では、ウンチに大量に含まれる大腸菌を汚い菌として汚染の指標とし、食中毒の元凶のように未だに扱っています。こうした風潮の発端は、江戸や明治の頃、「東京湾の水は汚れていて大腸菌が見つかった。おそらく、コレラ菌や赤痢菌もいるかもしれない」と、コレラ菌や赤痢菌など有害な病原菌と同列に並べられたことにあります。そんな誤解からたどりついた先が、現在の殺菌・抗菌に精を出す日本です。
しかし、これは大きな過ちでした。細菌も生き物です。人が抗生物質や殺菌剤で一掃しようと取り組むたびに、いじめられ続けた細菌たちはより強い子孫を残し続けようと、耐性菌を生み続けました。薬や殺菌剤では死なない菌が着々とその数を増やしています。それが今、社会問題になっているのです。
また、大腸菌は約200種もの変種を生み出しました。その多くは、生き延びるために強い毒性を持っています。この157番目に生まれたのがO-157です。2011年4月に起こったユッケ集団食中毒の原因菌O-111も大腸菌の変種です。
しかし、O-157もO-111も実態はヤワな菌なのです。O-157は、菌のエネルギーを100とすれば、70を毒素の産出に使うため、生きる力は30しかありません。
種々雑多な菌の棲む場所では、他の菌の強さに負けて排除されてしまうような、生命力の弱い菌なのです。
それを証拠に、自然が豊かで、さまざまな菌とともに生きる途上国には、O-157がほとんど存在しません。O-157が猛威を振るうのは、先進国の学校や幼稚園、レストランの厨房など、隅々まで除菌してある、細菌ゼロを目指す場所です。
雑多な菌がいない場所では、生命力の弱い菌も、わがもの顔で増殖できてしまうのです。
身の回りの菌を排除しようとする行為は、結局、自分の健康を脅かす危険性を高めることに早く気づいてください。
まとめ:清潔な場所では、単一の食中毒菌が繁殖しやすい
【書籍】50歳からは「炭水化物」をやめなさい。
~「病まない」、「ボケない」、「老いない」体をつくる腸健康法~藤田 紘一郎 より、抜粋・編集
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